シンクロニシティー



「シュウ! 起きて」

 シュウの口元を右手で塞ぎ、不必要なほどの大声で、叫ぶように言った。
 シュウを起こすには、充分過ぎるほどのボリュームだ。

 多分……
 自分の中に芽生えた淫らな欲望を、吹き飛ばそうとしたのだと思う。


 シュウはパチリと目を見開くと、ほんの少しの間、不思議そうな顔で私の顔を見詰めていた。
 なかなか現状を把握できないようだ。

 顔が近過ぎて思うように息ができない。
 けれど、顔も、視線すらも逸らすことができず、ただシュウを見つめ返していた。


 やがて――

「ごめん、寝ぼけた」

 シュウはポツッと言って、申し訳なさそうに苦笑した。


 謝らなければならないのは私の方だ。
 一瞬だったとはいえ、シュウにキスされてしまおうか、などと不実なことを考えてしまったのだから。