シンクロニシティー

「そう……ね。勇気や度胸なんか必要なかったかもしれない。真っ直ぐに彼を想う気持ちだけで十分だったかも。

でもあの時の私には、彼との未来が全く見えなくて、不安になった。怖くなって、逃げ出した」


「そうですか? あなたはただ、父の幸せを願って身を引いた。違いますか?」


「そんな風に正当化もできるわね」


溜め息のようにこぼして、彼女は自嘲気味な笑みを浮かべた。



「もしあなたが別の選択をしていたら、シュウは父とあなたと幸せに過ごしたかもしれない。わからないけど、でも……。

そしたら私は生まれてなかった。シュウもこんなことにはならなかった。今頃きっとピンピンしてた。

私なんか――

生まれて来なきゃ良かった」



目の奥がじーんと熱くなって、その痛みに耐えきれず、瞼を伏せて俯いた。途端、生温いものがダラダラと頬を伝う。



泣いたってどうにもならないのに。

私が泣いても、きっとシュウは目を覚まさない。