彼は何も言わず、脱いだシャツで私の背中をそっと覆った。
私の上半身が薄桃色に包まれた。
理由がわからなくて、
「寒くないよ」
と言えば、
「うん」
とだけ返して、視線を私の胸元へ落とす。
促されるまま彼の目線を辿った。
私も彼同様に、濡れたカットソーが身体に密着して、ブラジャーだけでなく胸の谷間まで透けて丸見えになっていた。
ちょっと恥ずかしいかもしれない。
そして、みっともないかも。
でもでもだからって、彼のシャツを借りる義理などない。
第一理由も……
一体彼に何のメリットがあるというのだ。
「平気だよ」
脱ごうとすれば、「僕が嫌」と、私の両手首を優しく掴んで制す。
嫌って何?
どうしてあなたが?
王子様は――
我儘だ。



