シンクロニシティー

「荷物、どこよ?」

母の問いなんか無視して、もう一度尋ねた。



「『ただいま』ぐらい言ったらどうだ」

見かねたように父が口を挟んだ。



あんたには関係ないでしょ、と思う。

家庭と呼ぶには寒すぎるこの家のこと、散々、見て見ぬ振りをしてきたくせに、今更何?



「そっ……そうよね、荷物ね。ここよ」


母はダイニングに隣接しているリビングへと足早に移動し、テレビの前に置いてある机の影から、私の大きな鞄を持ち上げた。


自ら母に近付き、おもむろにそれを受け取った。



「じゃっ」

さよならの挨拶的なことを一応は口にし、踵を返す。



『ただいま』を言う必要なんかない。すぐまた出て行くんだから。