家には母親だけでなく、父親も居た。 まだ午後9時前なのに、珍しい。 今日は仕事早く終わったんだ、と。ただ単純にそう思った。 ダイニングに向かい合って座る二人に、 「荷物どこ?」 素っ気なく訪ねれば、 「あ、ああ、お帰り、琴子」 母がガタリと椅子を鳴らして、慌ただしく立ち上がる。 「ねっ……ねぇ、琴子。一体何があったの?」 電話での剣幕が嘘のように、甘ったるい声で母が尋ねる。 腫れ物でも触るような、おどおどした態度に苛ついた。