「矢野内、お前、今日はいい顔してんじゃねぇか。感じてんのか?」
耳障りな声が聞こえ、途端、シュウの姿がフッと消えた。
代わりに視界を埋めたのは――
私の上で身体を必死に動かしている、酷く見苦しい生き物。
シュウじゃない!
何コイツ? 誰コイツ? シュウじゃないじゃん!
頭の中が混乱して、これが現実なのか夢なのか、その区別すらつかなくて。
ベッドサイドの棚の上にあった、透明なガラス製の大きな灰皿に無意識的に手を伸ばしていた。
その中には、二口ほどしか吸っていない長めの吸い殻が一つ。
結構な重量感のそれを持ち上げれば、それはポロリと床の上に零れ落ちた。
醜い生き物が私に覆いかぶさって来て、何かに唇が塞がれた。纏わりつくような粘っこいそれは、何度も何度もしつこく食んで来る。胃の中がグチャグチャ掻き混ぜられているような不快感に、顔を顰めた。
消えろ! 消えてなくなれ!
心の中でそう叫び、手にした重いそれを目の前の醜いモノの天辺目掛けて叩きつけた。



