掴まれた腕を乱暴に振り解くこともできず、
「わたし、レイジとはもう……」
縋るようにナッチを見詰めて今の気持ちを伝えようとしたけれど、巧く繋げられない。
「レイジくん、コトに凄く会いたがってたよ?」
ナッチは、我儘ばかりの困ったちゃんを言い聞かせでもするかのように、苦い笑みをこぼして柔らかい口調で言う。
私に会うために――違う、私と『ヤル』ために、レイジはわざわざナッチを介して、ついでに泣き言をたれて同情まで引いたんだ。
狡いひと。
「コトっ! なっちゃん!」
そうこうしているうちに大声で名を呼ばれ、私たちは同時にその声の方へと視線をやった。
わざわざ見なくたって、声の主が誰かなんてわかっていたけれど。



