そうして私に向かって差し出されたのは、雪枝さんの数Ⅱのノート。
「写して、今すぐに」
冷ややかに言い放ち、ちっとも受け取ろうとしない私のお腹を、ノートの端で軽く突く。
感じ悪い……でも、ありがとう。
素直にそう思った。
「うん、わかった、ありがと」
言いながらノートを受け取り、未だかつてないほど(私にしては)機敏な動きで、自分の席に戻った。
雪枝さんって変わっている。
私も人のこと言えないけど。
いつも不機嫌で無愛想で、でもだからこそ嘘がないような気がする。
自分にも他人にも厳しくて、クラスの皆にも煙たがられている。
でもそんなの全く気にすることなく凛としていて、決して自分を曲げない感じ。
誰かに好かれるとか、嫌われるとか、それ自体に全く興味がないようだ。
ちょっと怖いけど、話しかける時なんかいつもビクビクだけど、私は嫌いじゃないかな。



