「こういうことしてる時点で、もう私は、先生のものなんじゃないですか?」
この男は、ナッチを父親の暴力から『一応』守ってくれている。
逆らう訳にはいかなくて。
思ってもいないことをツラツラと口にできるのは、私の特技の一つだ。
けれど私は友達思いでもなんでもなく、結局は自分を守りたいだけだ。
ナッチを失えば独りぼっちになってしまう、ただ、それが怖いだけ。
「バカか? お前。身体だけじゃなく、心も寄越せって言ってんだよ」
言って神崎は、私の顎を乱暴に掴んで振り向かせようとする。
キスされる――
そう思ったから、全力で首を振ってその手から逃れ、顔を両腕で囲って窓に伏せた。



