シンクロニシティー



 何を言いたいのかさっぱりわからなくて、ただ「うん」とだけ返せば、雪枝さんはプイと顔を背け、同時に身体も翻して悠々と歩き去った。




「昨日もアイツ、『Gスクエア』で万引きやらかして……また俺、呼ばれたわ」

 神崎が愚痴をこぼすが、その声は大して迷惑そうでもなく、むしろ喜んでいるようにすら聞こえた。


 『アイツ』とは、ナッチのことだ。

 ナッチは『ストレス解消』だとかなんとか――
 屈託なく笑って言う。

 欲しくもない物を盗んでは、容易に見付かり補導され、を延々繰り返している。


 初めて捕まった時、両親が引き取りに来て、帰宅後ナッチは父親に執拗に暴行を受けた。
 全身痣だらけで、右目なんか目を逸らしたくなるほど酷く腫れあがり、半分しか開かない状態だった。


 それをナッチが生徒指導主任の神崎に相談。
 補導される度、神崎が呼ばれるようになったのはそれから。

 表向きは……