「本当は動脈の真っ赤なキレイな血が良いんだけど…それを吸うと血が噴き出してあなたは死ぬわ。

だから静脈の中で新鮮な血が吸える首筋に噛みつくの。」


キンッ!

八重歯が伸びていた。

「中々、可愛い八重歯だな…」


「君…名前、何だっけ?」

「幸大…ってもう忘れたのか…」


「珍しいわね。

追い詰められても冷静なんて。

普通は騒ぐわよ?


「まぁな。

榊みたいな美女に迫られたり、学ランを脱がされたり、

首筋に噛みつかれるなんて興奮こそすれども騒ぐなんてもったいない。」


「面白いわね。

じゃあ…」

スッ…

姫野が幸大の首筋に噛みつく瞬間。


ドシュッ!


「がぁっ!?」


姫野が飛び退く。

「な!?

何よ…それ!!」

姫野は口の中から血を流す。

「吸血鬼でも血を流すんだな。


これは…俺の血さ。」

姫野が噛みつこうとした首筋には赤黒い刺が出ていた。


「血?」

「これって使うの痛いんだよ。


血管とその上の肉と皮膚を貫いてるんだから。」

「あなたは…何者なの?」

「無限の血液を持ち、自在に操る…

そうだな…

ブラッドマスターとか?」

「自在に?」