それはある日の放課後だった。


空から雫が…というよりも滝の如く雨が降り注ぐ。


「参ったな…傘持ってないんだよ…」

幸大が言う。


「天気予報見なかったの?」

姫野が言う。

「TV、無いんだよ。」

幸大が言う。

「え?

そうなの?」

クーニャが言う。

「ああ…

実は親とは離れてな。

って言っても近場だけどさ。


だからTVとか買ってないんだよ。

新聞もとってないし。」

「独り暮らしなの?」

クーニャが言う。

「いや…まぁ、同居人が居る。」


「ねぇ…

血をくれたら相合い傘で帰ってあげるわよ?」

「断る。」

「私と相合い傘なんてかなりのモノよ?」

姫野が言う。

「俺の血を吸うな。

俺は吸血鬼にボランティアで血をやるほど酔狂じゃねぇ。」

「私は相合い傘にプラスで体の密着だよぉ?」


「断るって言ってんだろ…」




「幸大さん。」


傘を差して玄関まで歩いてきた少女。

片手にはもう一本の傘。


「咲子…」

「…誰かしら?」


姫野が幸大の胸ぐらを掴む。

「私たちにわかるよぉに説明してほしいなぁ?」


クーニャが逃げられないようにガッチリ腕を掴む。


「幸大さん…

そちらのお二人は?」


幸大を睨む咲子。