「ここは?」

幸大が見たのは真っ白な空間。


そして、そこに浮かぶ紅い何か。


「何だ、これは?」

幸大が言う。

『余は吸血鬼の王。

先ほどそなたの体内に入ったであろう?』

紅い何かが言う。

「吸血鬼の王?」

『うむ。

名乗りたいのは山々だが…余には名前がないのだ。

生まれながらに王であるからな。

我が先祖も誰一人名前がないのだ。』

「ここはどこだ?」

『わからぬ。

が、恐らく精神世界と呼ぶべき所だ。』

「精神世界…」

『そなたとは既に肉体的融合は果たしたとは思うたが…』

「肉体的融合?」

『そなたの体は既に吸血鬼の体である。

そして、余はそなたの記憶を共有できるのだ。』

「マジかよ…

俺はあんたの記憶を共有できないんだろう?」

『そなたの体内に入った余は言わば魂。


記憶は想いとも呼べるモノだ。

肉体的融合の記憶を共有とは脳に蓄積されしモノだ。


余とそなたがこの精神世界で別々に存在しているということはあくまで肉体的融合のみされた。

わかるか?』

「何となく。

でも…あの男確かに俺は精神が眠ってるとか…」