「「っあ!」」
俺と彼女の声が重なる。
パシッ
倒れてくる弓を掴んだのはほぼ同時。
「「あ、すいません」」
謝ったのも、同時だった。
俺たちは初対面で見事、息を合わせることに成功した。
「……弓道部ですか?」
なんとなくそのまま会話を終わらせてしまうのがもったいなく感じて、俺は無理矢理話題を探した。
「あ、はい。まだ初心者でへたくそなんですけどね……」
嫌な顔もせず、彼女は俺のいきなりな質問にも答えてくれた。
「なんか、弓持ってるってかっこいいですね」
敬語。頭がいいのが分かっているからか、なんとなく大人っぽく見える。
「そうですよね。あたし、去年、部活、何入るか迷ってて、その時見たのが、電車で弓持ってる人で……。かっこいいなぁ、って思って、弓道部にしたんです」
不純ですよね。
そう言って彼女は笑った。
俺はそんな彼女を見ながら、えくぼがあるんだなぁ、なんて思ってた。
「理由はどうであれ、楽しそうだからいいんじゃないですか?」
この話ををするときの彼女はとても楽しそうだ。



