まぁ、常識として、隣に人がいるのに、キョロキョロとまわりを見回すというのは失礼だし、相手に不快感を与える。


だから、俺は彼女が隣に座ったと同時に人間観察をやめた。


そしてかわりに、神経だけを横にいる彼女に向けた。


彼女は長い弓を入れる袋を足で挟み、スクールバックから本を取り出しているのが横目で見えた。


そこでやっと気が付いた。


彼女が着ていた制服がこの辺で一番頭のいい学校のものだということに。


対して、俺は超が付くほどの普通の学校に通っている。


なんていうか、気持ちが落ち着かない。





電車が揺れる。



彼女が足に挟んでいた弓が、俺の方に倒れてくる。