少し性格がひねくれているのか、俺はいじめにあったわけでもないのに、わざわざ同じ中学の奴らがいかない高校をわざと選んだ。
特に理由はない。
あえていうなら、“なんとなく”だ。
俺は1人で電車に揺られているとき、音楽も聞かないし、本も読まないし、携帯もほとんど開かないし、教科書なんて絶対に開かない。
やることはただ1つ。
人間観察。
長い間、同じ時間の同じ車両にのり続けると、顔は知っている、という人が増えてくる。
もちろん、知っているのは顔だけで、話したことかあるわけでも、友達でもない。
ただの顔見知り。
俺はその知っているのに、知らない人を探し、観察するのが好きだ。
――あのおじさん、毎回デカいカバン持ってるけど、何入ってんだ?
気になるけど、聞けるわけない。
ただ、想像して、楽しむだけ。
そんな毎日に、新しい“お客さん”が現われた。
それが彼女だ。



