たいした勇気もないくせに、俺は言おう言おうとしていた言葉を口に出した。


「あの……、名前教えて下さい!」





彼女の顔がまたきょとんとしたものにかわり、すぐに笑顔になった。


「愛奈です。橘愛奈。愛に、奈良の奈で愛奈です」



聞けた。


ずっと知りたかった彼女の名前。


俺は初めて彼女に笑顔を向けることができた。





彼女の降りる駅についてしまった。


「私、ここなんで……、キーホルダー、本当にありがとうございました」


彼女はそう言って、笑顔で手を振って降りていった。



――また、彼女に会いたいなぁ







end