俺は、毎日彼女に会ったら言おうと思っていた台詞を頭の中で再生する。何度も。



――――よしっ、大丈夫




俺は席を立ち、彼女に歩み寄った。


ただ窓の外を見つめていた彼女は俺が声を掛けるまでこちらを見なかった。


「あの……」


振り向いた彼女は俺の顔を見て不思議そうな顔をした。


「これ、前に落としましたよね?」


俺は持っていたキーホルダーを顔の高さまで上げる。


そのキーホルダーを見た瞬間、彼女の顔が変わった。


「……っあ、これ」


キーホルダーにゆっくり手を伸ばし、キーホルダーを手にとった。


そしてしばらくそれを見た後、俺の顔を見た。


「あ、あのその、本当はすぐ渡そうとしたけど、間に合わなくて……」


違う、こんなことが言いたいんじゃない。


でも、俺の口から出てくるのは言い訳がましい言葉がばかり。


「――ありがとうございました。大事なもので、無くしてから探してたんです」


彼女の口から出た感謝の言葉と、笑顔が俺に向けられていると思っただけでうれしい。