そこで、見つけたのだ。
彼女を。
俺は捜し求めていた彼女が近くにいるのに、呆然としたままだった。
彼女に話し掛けられる時間は限られている。
彼女の方が後から乗り、先に降りるからだ。
その時間、約8分。
たった8分でできることなんか限られてるのに、俺は言葉が出ない。
こんなことしてる間に、ほら、一つ目の駅を過ぎた。
とりあえず俺はカバンからキーホルダーを取り出した。
彼女のカバンについていたキーホルダー。
俺が拾って、大事に持ってたやつ。
正直、キモいと思われるかもしれない。
見ず知らずの俺が1週間以上も前に落としたキーホルダーを大事に持っていて、それを渡されるんだから。
でも、俺には“そんなこと”で済ませることのできるレベルだった。
彼女と話が出来るのなら。



