彼女の担いでいるスクールバックについているキーホルダーが落ちたのだ。


彼女は電車を降りる時、近くに立っていた人と少しぶつかり、キーホルダーが落ちた。


中には綿がつまっているであろうそれは音もなく、落ちた。



そして彼女はそれに気が付かなかった。



「……っあ!」


渡そうとしたけど声をかける頃にはすでにドアは閉まろうとしているところだった。




俺はキーホルダーを見つめてみた。


「(お前、彼女のカバンについてたんだな。幸せもんだな)」


柄にもなく、キーホルダーに話し掛けてみた。


もちろん返事は返ってくるわけもない。


ただキーホルダーについているチェーンがチャラチャラ揺れただけ。



「(キーホルダー君、ごめん。君をだしに俺は彼女に話し掛けるね)」


俺は小さく、一世一代の決意を固めた。