屋上を降りた皇帝が向かったのは、とある教室。

「あ、きたきた、お兄ちゃん」

遥の到着を待ち侘びていた弟が、ぱぁっ、と表情を綻ばせる。

女と同等かそれ以上に、弟はお兄ちゃんである遥が大好きである。

思えば天神シリーズでブラコン、シスコンの走りは彼かもしれない。

しかし、そんなお兄ちゃん大好き弟の目の前で。

「遥ぁ、久し振りぃっ!」

茶髪ロングの女子生徒が遥の腕にしがみついた。

「修学旅行から帰ってきて以降、初めて会うよね!はい、これお土産のキーホルダー『ムカッチャくん』」

女子生徒が不細工極まりないキーホルダーを遥に差し出す。

某幸運体質女子生徒が、某不幸体質妹に土産として買ったのと同じものだ。