「あたし、もうすぐ帰らないといけないんでしょ?」
言いたくないけど、確認しておかないといけない。あたしは気づいていた。この大奥には時計がないし、あたしも携帯がないから時間が分からない。きっと、帰らなければならない時が来て、それは突然告げられるのかもしれない。
『先日は眠っている間に帰ったものな』
今度はキヨの声だ。あたしはその声に頷く。
「帰る前に、何かしておかないといけない事、ある?」
「いいえ」
レイが即答した。
「してはいけない事はあります」
「それはなに?」
「大奥でお召しになったもの、全てを置いていっていただきます」
「ドレスも下着も?」
「そうです」
あたしはカッと顔が火照るのを感じる。だって、先日は眠っている間に、リアルな世界に帰ってしまったもの。気づいたらあたしは着替えていた、ということは。
「お嫌かもしれませんが、わたくしが戻られる前にドレスをお脱がせいたします」
レイが冷静に淡々と説明する。
じゃ、じゃ、この前も!?
「この前は俺。大奥の代表の務めなんだよ」


