「上様……どうかお言葉を」 な、何を話せばよいの? あたしの焦りを読み取り、キヨが小声で教えてくれる。 「こちらへ来られて、幸いです、と」 ええと。 「……幸いです」 肝心なところしか、言えない。 200人以上はいそうな広間で突然、前に立って話すんだから。 「上様、ご機嫌よう」 そろって「ごきげんよう」なんて挨拶をする。 『上様』? ソレッて、あたしのこと……だよね!? やっぱり、あたし大奥に来ちゃったみたい。 それも男ばかりの大奥で、あたし一人が女なの。 どうしよう……。