キヨはレイに比べると剣の動きは遅いが、低い位置からしっかりと深く剣を突き出してくる。大胆な攻撃は、時には防御が遅くなってしまう弱点がある。
それでもキヨは積極的に身体を伸ばして、長身のレイに突きを繰り出す。
キヨの深い突きに苛々してきたのか、レイの剣さばきのスピードが速くなる。
「見ていられないわ」
喜んでいるレンとは反対に、ランは演台から顔をそむけている。
がんばって……キヨ、レイ。
あたしのために2人が戦い続けている。実際は、自分自身のプライドのためだろうけれど、剣を持ち闘う男性たちに、胸がきゅんとする。
ふたりの白いユニホームとマスクからは表情が見えない。
それでもこの勝負への熱心さ、本気は見る者の心に深く訴えかけてくる。
時間が過ぎるとともに、正確だったレイの剣先の動きに疲れが見え始め、キヨは脚の動きが遅くなった。
やはり罰を受けた身体は、不調なのだろう。元気で身体の大きく腕の長いレイは巧みに剣をあやつる。
また、やっと攻撃権をレイから奪っても、突きを決めるのは難しいらしい。時間内でキヨが攻撃できたのは限られた本数で、ほとんどレイの攻撃の防御に甘んじてしまう。
結局のところ、レイの攻撃が有効となり、勝利者はレイとなった。
お互いに向き直り、礼をした。ふたりとも、マスクを取ると大量の汗が零れ落ちる。キヨは足元をふらつかせながら、あたしに申し訳なさそうな苦笑いを見せた。
『ごめん、俺、御年寄は辞退するわ』
キヨから頭の中に送られてきた言葉に、あたしは頭を振る。
罰を受けて身体が弱っていただけだよ。ベストコンディションのときなら、負けないよ。


