「お前ら、何の用だよ? お目見え以上でも下役だろ」
キヨは明らかに面白くないようだ。
「あなたは上様を独り占めしようと、自己主張しすぎなんですよ」
どうも弟のレンのほうは、ずばっと物を言う性質らしい。兄のランがレンのチャイナ服の袖を引っ張っている。
「レン、上様の前で、人の批判なんて失礼ですよ」
「兄上はうるさくてかなわない」
ランとレンはあたしの前にひざまずき、まず見下ろしている大奥代表のレイにお伺いをたてた。
「上様のお着替えをお手伝いさせていただいて、よろしいでしょうか」
「……うむ、いいだろう、上様、こちらへ」
レイに誘導されて、あたしも慌てて走り出す。レンがいつの間にか、あたしの髪を梳かしつけてくれたみたい。やんちゃだけど気が利く。
レンはキヨに向かって、
「ほうら、みろ」
と舌を出していて、またランに叱られている。
「まことに礼儀作法が出来ていない弟でして……ホラ行くぞ」


