イケメン大奥



「上様、お目通りでき、光栄です」

 
 
 この広間には「お目見え以上」の者たちのみ、入ることが許されている。お目見え以上は、呉服の間勤務、御年寄、御中臈、表使、御鍵口など。(レイ談)
 
 お目見え以下の者は大奥の掃除や台所仕事等の下働きの者たち。




「わたくしは、上様の本日のお召し物を担当した者で、蘭(ラン)と申すものです」

 ラン? 女の子みたいな名前。

 
 清(キヨ)といい、令(レイ)、蘭(ラン)、大奥で働く者の名前は、不思議と短く呼びやすい。


「ぼくは、蘭(ラン)の双子の弟で、蓮(レン)と申します。兄もぼくも、呉服の間に勤めています」



ランとそっくりな顔が、その背後から現れた。ドッペンゲンガーか、なんて突っ込みたくなるほど瓜二つ。さすが、双子だ。


ランは液体が入ったビンを持ってきていて、あたしの青いドレスの油しみを叩くようにして、拭いてくれた。液体は油分を浮かせてとるのに、適当な成分をませて作ってきた洗剤なのだそう。


「ランは得意分野は化学と裁縫ですから」


「上様の前で、自慢しないで」



同じ顔で、しぐさもよく似ている。これで服が同じだったら、区別がつかない。