イケメン大奥



「食事は食べたの? 身体は……大丈夫?」


頬に斜めに切り傷がある。手首には赤くねじれた紐の跡。


「心配性だな」


あたしの髪をくしゃくしゃとかき乱して、キヨがくすっと笑う。中背で、目線が近いこともあって、目が合うととても近くに感じる。


「コラ」


後ろから背の高いレイが、あたしの頭を飛び越えてキヨの手をつかむ。


「上様に、何をするんだ。失礼な」



キヨに乱されたために、ぐちゃぐちゃになった髪をほどく。あたしの長い髪が、ときはなたれて腰のあたりに落ち着いた。


アップにしていたためか、少しウェーブを描いているロングヘア。


その髪を後ろから大きな指で絡め取られる。レイの指。


レイの指があたしを絡め取ろうとする。




少しずつ髪の毛を引っ張る力が強くなって、あたしは顔をしかめた。



「上様、どうかお食事をお続け下さい」


レイの口調は何事もないかのよう。