「姫様が『大奥』を自身で選んでいらしたのは、明瞭です」
明瞭て言っても、あたしは広告を見て好奇心で、ね。
「大奥の入口は広告から繋がっていたのですよ」
あの。
キヨ、近いよ。
「姫様に挨拶をしたい者がそろってお待ちしておりますので」
青みがかった黒髪が、下げたキヨの目元にサラリとかかる。
「姫様、こちらへ」
あたしの足元にひれ伏して一礼の後に、キヨは部屋を出る。
青いふわりとした絨毯(ジュウタン)の両脇にひれ伏している男たち。
本物だ。
この場所は大奥だ。
テレビや絵で見た、ひれ伏した者たちの姿。


