ううう……もう!!!
ひざまずかないで~!!! 人をいたぶっておきながら、
形勢が危うしとなると、するりと弱々しく振舞う。そのレイのさじ加減が絶妙で。
あたしを惑わせて振り回すんだ……レイは。
この男性の残酷ないたぶりを、完全に嫌がっていない自分が怖い。
傷つけられそうなギリギリのところに自分の心を置くスリルに、
あたしは、快感を覚えている。
「レイ、あなたのことも大事よ」
ああ……あたしは、狡いね。
『あなたのことも』の『も』は、あたしの逃げなの。
広間の扉から入ってくるキヨが、視界に入ってしまって、
キヨの姿を見ると、うれしいの。
けれど意地悪なレイ、あなたを気にしながら、キヨに声をかけるの。
「良かった……」
解放されてよかった。
でも、近づいてきたキヨの腕の腫れを見て、哀しくなる……。
「あや姫」
キヨの声で、直に、この呼び名を聞けるのは、うれしい。
やっぱり、うれしいよ。


