イケメン大奥



「残念だったねぇ」


午後前のお昼時になると、客足がやっと落ち着いてくる。


ミナミのおばちゃんが、あたしに話しかけてくる。


得意げだ。



そりゃ、大好きな「若い子」と話が出来たから。


「今日は、ブリ大根にしようかな、だって」


ミナミのおばちゃんは、「それでね」と自慢した。


「あたしが、今日はサンマが安いから、旬のものにしたら?
なんて言ったら、素直に聞いてくれてね」


良かったですねぇ……、うう、悔しい。




「あたし、先にお昼に入るわね」


おばちゃんはご機嫌で、軽いステップでブースを出ていった。



なんか、お尻が痛いのが我慢できなくなってきた……。


腰だって、なぜだか痛いのに。



陳列台の前で目立たないように腰をのばしたりしていたら、


見覚えのある姿がこちらへ一直線にやって来るのが見えた。