イケメン大奥


客はネチネチと言って、値を下げさせようとしているようだ。


中の鮮魚店の店主に聞いてくるしかない。


あたしは責任者に値段の相談に行くとき、ちらりと彼のほうを見た。



ミナミのおばちゃんが近づいていて、彼に何か話しかけている。


くううう。……悔しい。


うらやましい。


おばちゃんにこそ、できる技だ。



泣く泣く、責任者から値段を下げてよいと了承を得て、値札を替える。




それから客に商品を渡して、


陳列台にいたはずの彼を目で捜す。


居ない……よね。



もうレジに行っちゃったかな……。


しょぼんとしてあたしは、陳列台の商品の整理に向かう。


お客が触って元通りに戻していない商品を戻したり、


新しく午後から並べる商品に値札を貼ったりしながらも、



なんか、悔しかった。