あたしたちがギャラリーへと足を踏み入れると、御小姓たちや挨拶をしていた者たちは一斉に外で控えている。
「ここには貴重なものが多いので、限られた者しか入ることが出来ません」
キヨの誘導でギャラリーを見てまわる。
ふいに、キヨの声が頭に響いた。
『実はふたりになる機会がほしかったのです』
意味深な言葉。
キヨは、あたしと並んで絵に顔を向けたままだ。
『軽々しく、わたくし自身も、あや姫に触れたりお話することは禁じられているのです』
にしては……よく、しゃべってるけど。
『本日は、初めて大奥に来られたというので、わたくしが上臈御年寄(ジョウロウオトシヨリ)(注)として任務につくことが許されましたが』
うん、それで?
その難しい名の任務について?
『次からは、あや姫が希望なさらなければ、上臈御年寄として共にいることが出来ません』
次、来るかどうか、分からないけど。
※(注)…上様に使える代表役、上役。御年寄役の中から選ばれる。


