「あたし、この大奥にのめりこみ過ぎたのかも」
ハルが去って、ひとつ空席が出来た、
その穴を見たら、
あたしは急に、何にのめりこみ過ぎたのか、
察してしまった。
「皆はずしてちょうだい」
あたしの命令に、皆が席を立つ。
「ひとりにしてくれる?」
『大丈夫か? あや姫』
キヨ、ありがとう。
脚が悪いのに、リツ、来てくれてありがとう。
「それでは表の世界へ戻りましょう」
リアルな表の世界に行けば、
リツの脚は楽になるだろう……。
そして、
あたしの手首も。でも、心は?
この心の疼きは?
あたしの命令に従って、あたしを残して去っていく
広い背中。
その背中や胸に抱きとめてもらう事が、
出来なくなるんだよ。
レイ、あたし、ここを去るべき者なのに、
情けないくらい
あなたと一緒に居たくて仕方がないの。
切ないよ……。


