わたくしが大奥に召喚されたとき、既に妻帯者でした。
ですから、
大奥に来てからも、恥ずかしながら表の世界が気になり、
元からあった能力を示して、
表使の役職を得ました。
妻は身体が弱い性質で、
とても心配ではあったのですが、
大奥と表の世界を行き来する表使であれば、
逢いたいときに
妻と逢えると思いました。
今だから罪を告白いたしますが、
大奥の上様が使われたものの中には、捨てるに忍びない物は多く、
わたくしは妻の必要に応じて
妻に綺麗な物や心和む珍しい物を贈りました。
このような罪な事を長く続けるつもりはなく、
いつかは妻の元、
表の世界へ完全に戻ろうと思っていた矢先の事です。
妻と表世界で逢っているときに、
彼女は倒れ、
何とか一命を取り留めました。
医師の診断を経て、「心不全」という病名がつきました。
わたくしは、大奥に来てから働き学ぶなかで、
妻が大奥へ来れば、
「心不全」の病状を大奥にいる間、
無きものと出来る、
それを知っていました。


