問いに答える声が頭に響き、次第に大きくなってくる。
近づいてくる……、ハルが来ている。
キヨがあたしの緊張に反応して、
護るように傍らに立ちはだかってくれる。
青い絨毯を踏みしめて、階段を上がり姿を現したのは、
やはり、ハルだった。
「上様がお持ちの書物について申し上げます」
低く頭を下げるハルに、動揺の影は微塵もない。
「訂正した理由は、繰り返し上様になられた方が、
増えたためです。
現在の上様がお二人目でいらっしゃいますから、
ご祐筆に命じて訂正させました」
あたしが二人目……、
「では一人目とは、だれか訊いてもよいですか」
ハルは頭を上げることなく答えた。
「わたくしの妻でございます」
………妻、て、奥さん???
驚くあたしに、
「大奥へ召喚されまする10年前に結婚した妻でございます」
丁寧にハルが言い直す。


