「悪化してはいないのね?」
あたしの手首は一気に腫れたような気がする。
今は随分おさまってきた熱を帯びた手首。包帯の上から押える。
「きちんと治してから、表の世界に戻られたのでしょうか?」
「いえ」
思い出した。
まだ紐の傷跡が残っていて、包帯をしたまま、リアルな日常に戻った。
そして部屋のベッドの上で目覚めた時には、
包帯は無かった。
「表の世界では傷は消えておったでしょう?」
何が可笑しいの?
リツの面白そうに笑っている。
「大奥では傷が治っていない、その状態で捨て置かれた。
その結果、あなたの傷は
この大奥の世界で、悪化したのですよ」
「あたしの身体は元の世界に戻ったのよ?
全身、手首も含めて戻ったのに。
そして綺麗に治っていたのに……」
悔しそうに言うのを、
リツは首を振って制した。


