『上様が、たかだか表使ひとりを
まともに呼べんとは……』
耳が痛いです。
立派な上様にはなれてないと思います。
でも、
本当に訊きたいことがあるんです。
この大奥とあたしが招かれる前にいた世界との繋がり、
そして時間のしくみを
もしもご存じならば、
教えていただきたいのです……。
「それでわざわざ呼び立てたとは」
「リツ叔父様!」
廊下の向こうから、その声はキンキン響いていた。
細面の小さな顔、狐みたいな顔で、細い目と鼻、口。
能面のような顔に服装はスーツ。
不思議な組み合わせだ……。
杖をついているところを見ると、脚が悪いらしい。
「大奥に来ると脚がやっぱり痛むわい」
リツはあたしの椅子の前に来て、
杖を置いて跪こうとして、しりもちをついた。


