イケメン大奥


「律、リツ。上様の言葉に答えてなさい」

あたしは声に出して言ってみる。

そうする事で自分の意志をはっきりさせるために。

「あたしが本日の上様です。
 至急、
 あたしの呼びかけに答えてください」


待ってみる、でも駄目だ……。

がっくりしているあたしの傍に、猫のようにふわっと茶色の髪が
すり寄ってくる。

ラン。心配そうにあたしを見つめる。

猫毛を撫でながら、自分を勇気づける。

「あ、上様」

気持ちよさそうに寄り添っていたランの瞳が、

あたしの首元に注がれる。


「その紅い痣も、大奥でできたものですか?」

んん? ああああ、これ。


「大丈夫、どこかでちょっと打ち身を作っちゃったみたい」

ごまかしちゃう。

レイがさりげなくあたしに視線を送ってくる、
そのしぐさが

あたしの胸を騒がせる。


含み笑いをした途端、

頭の中に大音響が響いた。


「こんの、破廉恥者が上様かい!!!」