「では、あや姫」
差し出された手は、催促をしてくる。
えええーーーーー!! まだ食べてるのに。
もうギャラリーとやらに行くの?
「あや姫、貴重な一日なのですから。思う存分、ここに居る間楽しんでくださらないと」
やだ。
あたしの心の声はキヨに届いたはず。
いやだ。まだ、食べる。
おいしいんだもん。
「欲がない方ですね……」
お付き合いしましょう、とキヨもスコーンをつまむ。
丁寧にスコーンをちぎって食べる姿は上品で、あたしは恥ずかしくなる。
あ。そういえば。
あたしの手が紅茶のポットに触れる前に、ポットはキヨの手のうちへ。
「紅茶を入れてくださろうとしましたね?」
そのくらい、させてよ。


