キヨが手を叩くとまた、椅子が運び込まれた。
椅子に座り、紅茶を蒸らす間、部屋中にアッサムティーの良い香りが広がっていく。
「上様はお優しい方なのですね」
「え?そうかな」
「失礼ながら、心の中を見せていただいても、暗い部分は見えてきません」
「えっと……たぶん、ここが何でも揃っているから」
キヨはくすくすと小さく笑い、茶葉が広がったのを見て紅茶を入れてくれる。
「そうですね……大奥は初めてですからね」
あたしは入れてくれた紅茶を飲んだ。
温かな茶色のしずくが、のどをゆっくりと潤してくれる。
ふと見回すと小部屋ながら、この部屋にはガーベラやバラが飾られている。
部屋の隅にはハート型の葉をしたポトスの鉢植え。
天井からはガラスの小さなシャンデリア。
「上様?」
思わず無心になって、あたしは部屋に見入っていた。
素晴らしすぎて、びっくりだよ。
こんな所に来たのは、初めて……。
「驚きましたね」


