「その前に軽い食事をとられてはいかがですか」
パンパン、とキヨが手を叩くと、スコーンとジャム、紅茶が用意された。
「これ…食べていいの?」
椅子の前にはマホガニーのテーブルが男たちの手で運ばれてくる。
「どうぞ。御小姓(オコショウ)になんなりとお申し付けくださいませ」
「あの、キヨ」
「なんでしょう」
淡々とテーブルの上にスコーンとジャムを並べ、あたしのために紅茶を用意しているキヨに、あたしはお願いした。
「いっしょに……食べてくれない?」
意外だったのかな……。
そんなことを言った上様は、過去にいなかったのかな。
キヨは目を見開いている。
静かな表情が崩れて、キヨのすました顔は、くちゃくちゃっとほどけた。
笑顔だと……目が細くなって、桜の花びらのような口のわきに、ぽこっと小さなくぼみができるんだ……。
「では、わたくしもいただきましょう」


