「キヨ、あたし、すぐに帰ることはできないの?」
「もう、姫様、帰られるのですか!?」
肩まである長めの髪を揺らして、キヨが驚く。
「だって……ギャラリーって何よ?」
ギャラリーとは大奥の中にある絵画やめずらしい物を集めた場所。
キヨが教えてくれた。
「今日1日はこの大奥でお過ごしになることですね」
「帰りたい!……だってあたし、仕事があるもん」
「仕事はご心配には及びません。この場所は、時間のはざ間にあります」
説明によると、この『大奥』は時間のゆがみを利用して作られている。
1日の時間をこの大奥で過ごしても、現実の世界では、
何も問題がないというのだ。
「わたくしは、与えられた時間、のんびりと日頃のお疲れを大奥でお過ごしになられることをお勧めします」
戻るのはそれからでも遅くはありません。
キヨの声があたしの頭の奥で響く。
「わかった。1日たてば、戻れるのね」
あたしは確認して、キヨの言うようにギャラリーで時間をつぶすことにした。


