「ふうん、、、きょうちゃんに近づかないでね。まいの、大事な人だから」
あ、そう。思わず唇が歪む。ませてるなぁ。
「まい、魚を買おうとしていただけだよ」
「タコ、どうでしょう」
最近値上がりしている、タコ。売れ残らせたくないのね。このさいだから、きょうちゃんに勧めてみる。
「酢の物とかいいですよ、さっぱりと。ワカメときゅうりとあ、ジャコとも相性がいいんですよね」
もう一度、強力に推してみる。
「やだ」
まいちゃん、即座に駄目出し。
「まい、お酢がきらいなの」
ああ。こいつだ、酢の物嫌いなのは。
「酢の物食べるとね、血液がサラサラになって痩せて美人になるんだよ」
ま、このちびっこには関係ないけど、と思いつつ、あたしは大げさに両手で自分のほっぺたを包んで見せる。
「お姉さんみたくなるの? なら、やだ」
こんの……チビ猿。(声には出して言わないけれど)
きょうちゃん、困ってるじゃないか。もう少し大人に気を遣いなさいよ。
「まいはね、お兄ちゃんの大事な人だから、もうこれ以上美人になる必要がないの」
「まい」
苦笑するしかない。きょうちゃんも姪っ子なら甘々になっても仕方ないのかもしれない。
「ほら、きょうちゃん、右手の薬指に、まいのあげた指輪してるでしょ?」
ん……ん、うん? もしかして、この指輪は、姪っ子にもらったのか!?


