「大奥とこの世界を行き来しているのは表使という役目の者だとは、ご存知ですよね?」
「はい」
「わたくしは表使として、大奥の物品購入および支払等で、この世界と大奥を比較的自由に行き来する権限をいただいております」
随時、自由に出入りしていることなのね。
でも、手引きをしてはいけないのではないの?
「上様として来ていただくのではありません」
ええ? どういうこと……?
「大奥には、ゴサイという役職があります。女子禁制の大奥ではありますが、中臈は1人、御年寄は3人まで女子を置くことが認められています」
「それは、大奥で働く、という事なの?」
「ええ。しかし……上様交代の際に、有利に次の上様に就くことが出来ます。なんせ、上様の退出を身近に、大奥で知ることが出来るのですから」
あたしはベッドの上で正座した。どうもこのハルはスーツを着ていると会社の上司のように見えてならない。
こたつ机の前に足を組んで座ったハルは温かい紅茶を飲んで、ひと息つく。
「外の世界、そう、ここからだと携帯に連絡があり、それから大奥への鍵となるサイトへのクリックを一番最初にした者が『上様』となります」
うん、うんうん。
その話だと大奥にいて「ゴサイ」という役職にいてね、単純に名乗りを上げれば、上様になれるということなの?


