イケメン大奥


朝だ。目覚ましを見ると7時。


今朝はゆっくり出来そう。ポットにお湯を入れて沸くまで、ぼんやりとベッドに横たわり天井を眺めた。あたしのリアルは6Kの部屋にひとり暮らしだった。

着ているのはパジャマ。……あれ?これって。


あたしは全裸で大奥のベッドにもぐりこんだよね?

帰ってきたら、ちゃんとパジャマも、うん、下着も着ている。

腕の包帯は解かれていて、紐の跡は全くなかった。

手首を触って不思議な気持ちになる。



意識が戻る前に誰が着替えさせてくれたんだろう?



『わたくしですよ、姫様。わたくしが着替えをさせていただきました』


その時、あたしの頭に男性の声が響いた。


キヨ? ううん、違う声。もっと年配の人の声。あ、もしかして。


『ええ、ハルです。キヨと同じように、わたくしも、人の心の中を見ることができますので』


同じような能力があるということ?

着替えさせられたことも驚きだけど、キヨと同じ能力をハルさんが持っているとは驚きだ。


『そうです。表使として、大奥を外部から悪者に安易に出入りされないようにするのに、この能力は役立ちます。こちらの世界の者は腹でなにを企んでいるか分かりませんからね』


びっくりした……。


『今、そこに他の人はいますか?』


「あ、ううん」

声を出さなくてもいいのに、つい言葉が出てしまう。


『では、お話したいことがありますから、姿を現します』

ハルはそう伝えてから姿を現した。