「上様もご機嫌麗しくあそばされませ」
前列真ん中の男が、あたしの前に進み出て、代表で挨拶をする。
「ご機嫌、麗(ウルワ)しう」
後ろの男たちが、代表に続いて挨拶をした。
キヨが教えてくれる言葉を、あたしは語るしかない。
「本日はギャラリーにて、絵を拝見します……」
あたしが。ギャラリー?
頭の中に届く声の通りに言っていたら、わけわからない。
『後で説明しますから、そのように言ってください』
キヨの声が頭の中にこだまする。
「わかった、言えばいいんでしょ!」
あたしは、やってしまった……大声で胸のうちを叫んでしまった。
右を見ると、キヨが頭痛がするのか、こめかみを押さえていた。
「ではこれで」
大奥って、こんなにプレッシャーがかかるものなんだ。
あたしは、早々に広間を出た。
後を追いかけてくるキヨと先ほどの小部屋に入る。
「……大奥とは窮屈なばかりではありませんよ」
そうなの?
「来られた姫様方はみな、満足してお帰りになります」
あたしのほかにも来た人がいるのか……。


