言えないけど、言葉にならないけど、淋しい? 辛い?
レイの腕からその想いを探ろうとしてみる。ぎゅっと腕を引き寄せられたまま、背中からレイの身体の熱を感じる。
……こうしていたい……。
レイ、ずっと、こうしていたいよ。ここに居たいよ。
大奥を去るのが、あたしは寂しいし哀しいし辛い。ここで皆と一緒に居たいの。想いを言葉にすると壊れてしまいそう。あたし自身、罰せられるのかもしれない。安易にあたしのわがままに頷けば、レイも罪に問われるのかもしれない。
だから、あたしは黙って、レイが腕を放してくれるのを待つ。
「……」
「申し訳ありません」
されるがままになっていたら、惜しむようにレイが腕を放して、あたしと向き合った。
「包帯を取りましょう、あちらに帰れば、おそらく痣は残っておりませんから」
レイが丁寧にあたしの手首の包帯を外してくれる。大きい手が優しくゆっくりと包帯をほどく。そうしてあたしの手をそっと放した。
「ご準備を」
あたしはその声に従って、衝立の陰でドレスや下着を脱ぎ捨てる。あら、意外と可愛い下着を着ていたんだ、なんて思う間もなくベッドにもぐりこむ。
「確認をさせていただいても、よろしいでしょうか」
まだ後ろ向きで、着替えが終わるのを待つレイ。
「どうぞ、確認して」
何一つ、持って行ったりしないから。


