『それなら、寂しいって言えよ』


そう言った涼介の息は、部活で走っている時よりも上がっていて、
そんなに一生懸命走ってくれたんだ、って思ってドキドキした。

嬉しくなった。


涙で涼介の姿がにじんだことが、もどかしかった。

いくら涙をふいても、どんどん零れ落ちた。


だけどそれはうれし涙。


『好きだ。付き合ってほしい』


赤く、照れと暑さで火照った涼介の顔を今でも覚えている。


忘れないと…あきらめないと…って思うのに、
あの愛しい姿が脳裏に焼きついて離れない。


あたしの周りをしつこくつきまとう。

忘れそうになったらまた現れて、会いたいときには会えない。


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忘れさせて。


あたしは、あなたにもう、会いたくない。


忘れたいの。


お願いだから、もう現れないで。

美由紀の前だけにいて。

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あたしは全てを忘れたい。