あたしの頭の上から降ってきた声に、あたしはびくっと震えた。


「な…なんだよ」

「やめろって言ってんの。邪魔なんだよ」


あたしが聞いたことのない、
怖くて、低い、だけど、カッコいい、愛しい声。


「なんだよほんと。つまんねぇの。冷めちゃったよ」


しつこかった人はすぐにあたしの手を離して、席に戻っていった。

あたしの手には、つかまれていた跡がくっきりと残っていた。


嫌だな…。

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「ごめんな」

「え?」

頭にぽふっと手が乗せられた。


あたしが声のしたほうを見たときには、もう…いなかった。


だけど、この温もり…。

あたしはその温もりが逃げないように、ずっと頭を押さえていた。


ありがとう…。いつも、あたしはあなたに助けられてばかり…。

本当にありがとう…


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涼介。