高校最後の音楽祭。

あたしの思い出。


ここで初めて涼介に会った。

綺麗な笑顔でタクトを振って、クラスのみんなをまとめてた。


だけど彼はあの時、熱があったんだ。


.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

あたしのクラスは順番が次だったから、あたしはその準備をしてた。

その時、何かが倒れるような音がした。


「?」


あたしはおそるおそる音のした方をのぞいてみた。

すると、男の子が一人倒れていた。

「ひ、日南君! 大丈夫?」


あたしは駆け寄って涼介を抱き起こした。

おでこに手をあてると、とても熱かった。

ほっぺたも火照っていて、とてもしんどそう。


自分の持っていたハンカチを水道でしめらせて、涼介のおでこに当てる。

「あー…ごめん。ありがと。てかなんで俺の名前知ってんの?」

やっと起き上がった涼介は、あたしの方に向きなおって言った。

あたしは恥ずかしくなって、顔を真っ赤に染めた。


だって、理由は涼介のことが好きだったから。


「あ、えと、バイバイッ!」


涼介の質問には答えずに、あたしは逃げた。


何やってんだろ…。第一印象最悪じゃん…。


.

.

.

.

.

.

.

あたしは後になってたくさん後悔した。


なんであたしの名前も言わなかったんだろう、って。


だけど、やっぱり、ちゃんと会ったときに名前を言おう。

そう思った。


いつか来るその時まで大切にとっておこう、って。